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日本ジャーナル出版「自然と健康」 | |||
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尿管などに結石ができると、小さい場合、自然に出るのを待つことになるのですが、その間痛みで苦しむことになります。こういったときに力を発揮するのが猪苓湯(ちょれいとう)です。痛みがなく、しかも排石を早める効果があるのです。今回はこの猪苓湯について武蔵野赤十字病院の仁藤先生に解説してもらいました。猪苓湯で結石が丸みを帯びる 尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に石のような固まり(結石)ができる病気を尿路結石症といいます。結石ができる原因は不明ですが、尿に含まれるリン酸カルシウム、シュウ酸カルシウムなどの成分が結晶化して固まってできます。結石ができたところによって腎結石、尿管結石、膀胱結石などといい、症状は結石があるところによって多少違いますが、疼痛(とうつう)、血尿、冷や汗、嘔吐、腹部膨満などが見られます。 治療としては、結石が大きい場合(長径10mm以上)は体外衝撃波砕石術や経尿道的超音波砕石術によって細かく砕く治療を行います。 結石が小さい場合(長径10mm以下)は、約80%は自然に尿とともに排石されます。そのため、自然に出るのを待つことになるのですが、その場合でも疼痛(ズキズキする痛み)を伴うことが非常に多いという問題があります。 これは患者にとってつらいもので、この疼痛に対しては鎮痛剤や鎮痙剤が使われますが、西洋薬では長く飲むと副作用の心配があります。そこで注目されるのが漢方薬の猪苓湯です。 武蔵野赤十字病院泌尿器科の仁藤博先生(火曜日診察、月曜日は中目黒腎泌尿器クリニックで診察)は積極的に猪苓湯を活用し、大きな成果を上げています。 「他に重大な病気がなく、また激しい発作がなくて結石が小さい患者さんには猪苓湯をよく使っています。よく出ますね。自然に出るのをただ待つよりも早く出るのです。猪苓湯に利尿作用があるからでしょう。しかも痛みを伴わないのです。これが非常にいい。結石はギザギザしているのですが、猪苓湯を飲んだ患者さんの結石は丸みを帯びて出てくる。だから痛みがないのだと思います。 さらに、結石が大きくなるのを抑える働きもあります。大きい結石の場合でも、体外衝撃波砕石術や経尿道的超音波砕石術で小さくするとともに、猪苓湯も使うという治療を行っています」(仁藤先生) 痛みを感じず自然に(しかも早く)出てしまうというのは、とてもすばらしい話です。 「もっとも、膀胱の結石は簡単に治療ができますので猪苓湯は使いません。尿管の結石の場合に有効なのです。また、小さい腎臓の結石にも効果的です。腎臓の病気で海綿腎(かいめんじん)という先天性の病気がありますが、これには小さな結石を伴うことがあります。この結石に対しても猪苓湯は効果があります」(仁藤先生) 通常、漢方薬は患者の体の状態である「証(しょう)」を見て、それに合わせて処方するのですが、猪苓湯の場合、それほど「証」を気にしないで使えるという利点もあり、また西洋薬のような副作用の心配もありません。 臨床研究でも高い効果が得られる 仁藤先生は、この猪苓湯の尿管結石に対する臨床効果を検討し、客観的にその有効性を明らかにしています。その研究を見てみましょう。 尿管結石の患者52人(男性32人、女性20人)に1日7.5gの猪苓湯を1ヵ月間飲んでもらいました。結石の大きさは、上部尿管結石で長径4mm以下が7例、4〜10mmが17例、10mm以上が1例、下部尿管結石で長径4mm以下が12例、4〜10mmが13例、10mm以上が2例でした。 結果はどうだったのかというと、上部尿管結石の場合、累積排石数は4mm以下では2週間で4例(排石率−以下同−57.1%)、44週間で5例(71.4%)、4〜10mmでは2週間で1例(5.9%)、4週間で4例(23.5%)でした。上部尿管結石全体では、2週間で5例(20%)、4週間で10例(40%)でした。(表1)。 下部尿管結石の場合は、4mm以下では2週間で8例(66.7%)、4週間で10例(83・3%)、4〜10mmでは2週間で2例(15.4%)、4週間で6例(46.2%)でした。下部尿管結石全体では、2週間で10例(37%)、4週間で16例(59.3%)でした。(表2)。 尿管結石全体では表3のような結果になりました。結石が小さければそれだけ猪苓湯の効果が高いということが分かります。ちなみに10mm以下の結石の自然排石は、4ヵ月は待機することが望ましいといわれてますから、それを考えると、猪苓湯は自然排石をかなり早めることもこのデータから分かります。 痛みはどうだったのかというと、6例(11.5%)にありました。つまり約90%の例で痛みがなかったということです。また、副作用もありませんでした。 「痛みが見られたのはわずか11.5%で、排石に際し大多数の例で疼痛を伴うことを考えると、猪苓湯はこの痛みに対してかなり効果的だということです。90%近くが痛み止めを併用しなくても排石できたということは大いに評価できると思いますね。結石が自然排石する場合、排石する時間が短いほどいいですし、痛みや副作用がないのが望ましいのはいうまでもありません。猪苓湯はそれに適した薬だというわけです。この漢方薬はその成分として沢瀉(たくしゃ)、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、阿膠(あきょう)、滑石(かっせき)を含んでいます。前3者は利尿作用があり、阿膠は浮腫(むくみ)をとる作用があるとされています。滑石の薬理作用ははっきりしていませんが、これも加わって全体で利尿作用を高めているのだと考えられます」(仁藤先生) 患者を全体として見る漢方治療 このような結石には猪苓湯が大変有効なのですが、結石には何でも猪苓湯を、という発想はいけないと仁藤先生は話します。 「膀胱結石のように西洋医学的な治療のほうがいい場合は、それを行うのがいいのです。私は女性の不定愁訴の治療でも漢方薬を活用していますが、西洋医学的に対処できないかをまず考え、それでどうしようもないとき漢方薬を使うようにしています」(仁藤先生) ただ、西洋薬でうまくいかないからあいまいに漢方薬を使うというのは間違っていると、仁藤先生は力説します。西洋薬と漢方薬の違いをわきまえることが大切なのです。 「西洋薬は、何か病気があって、それに対して使われ力を発揮します。しかし、そうすると、ひとつの病気の名前のもとに個々の患者さんの顔が消えてしまう。一方、漢方薬は『証』に合わせた治療が行われているように、患者さんを病気をもった人間全体としてみて、それに対する治療を行うのです。顔を見た治療を行うわけですね。猪苓湯の場合は中間証で使われる薬ですから、あまり『証』にこだわる必要はありませんが、漢方の本来は人間全体を見た治療を行うというものなのです」(仁藤先生) このことを認識しないで、西洋薬でだめならとにかく漢方をというのはいけないのです。両方の特徴を生かして使うのがいちばんです。 水分を十分に摂取する さて、最後に結石がある人の、あるいは予防のための生活上の注意点について触れておきましょう。 まず結石の主成分はカルシウムですので、結石のある人は摂取を控えめにすることです。また偏食する人に結石ができやすいので、偏食しないようにバランスのとれた食生活を心掛けましょう。さらに水分を十分に摂ることも大切です。 「水分の摂り方が少ない人も結石が多くなります。水分の摂取量が少なく尿が濃縮されれば、それだけ結石ができやすくなるのは当然のことです。また水分を多く摂れば自然排石を助けることにもなります。 結石に限らず、基本的には水分を摂ることはいいことだと私は考えています。例えば便秘で長く発ガン物質が腸に止まっているとガンのリスクが高まるのと同じように、尿が濃縮すると、それだけ発ガン物質が膀胱に接触することになり、膀胱ガンになるリスクが高まります。それを避けるには尿を薄くしておくことが必要で、水分を多く摂るのがいいということなのです」(仁藤先生) 暑いところで働く人や汗をかく仕事の人などは、特に気をつけて水分を摂取するようにしましょう。 結石は自然に排石しても再発しやすい病気ですので、一度結石があった人は、以上の点に気をつけて生活することが大切だといえます。 結石症、尿道炎、腎臓炎、排尿痛、血尿、腰から下のむくみ、残尿感などに使われる薬です。中間証の人に適していて、あまり証にこだわらず使えるものです。 |
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